Thirty’s
翌朝、俺が出勤の準備をしていると


「おはよう。今日は早いんだね。」


起きて来た加奈が声を掛けて来る。


「ああ、昨日から本社スタッフの現場実習の付き添いでね。古巣の営業所に行ってるんだけど、今日は引っ越し現場の実習だから、早く出なくちゃいけないんだ。」


「そうなんだ、大変だね。頑張ってね。」


「ありがとう。君も気を付けて。」


「うん。じゃ、行ってらっしゃい。」


「行って来ます。」


加奈が見送ってくれるのは、嬉しいんだけど、その彼女の笑顔に、なんとなく後ろめたい気持ちを抱いている自分に気付き、その思いを振り払うように、首を左右に振ると、駅に向かって歩き出した。


今日は二日目だから、唯とは営業所で直接待ち合わせ。


「おはようございます、今日もよろしくお願いします。」


事務所に入って行くと


「沖田さん、お久しぶりです。」


今日の唯の実習に付き合ってもらう平山が出迎えてくれる。


「おう、ご無沙汰。今日は頼むな。」


「こちらこそ。まさか、また沖田さんと組めるとは思ってもみなかったから、楽しみにしてました。」


「ありがとう。でも今日の俺は御崎(みさき)さんの付き添いだから。彼女、もう来てるか?」


白鳥とまともに名乗れば、すぐに正体がバレかねないから、ここでは御崎唯。ちなみに御崎は母親の旧姓なんだそう。


「はい。今、着替えてもらってます。それにしても、えらい美人ですねぇ。ビックリしました。」


「そうか。まぁでも現場実習なんだから、遠慮せず、ビシビシやってくれよ。」


そう言って、俺は笑った。
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