Thirty’s
現場へ到着すると、トラックから次々と資材が降ろされる。


「じゃあ最初は養生から。」


平山が壁を指差す。


「家具を運ぶ前に、壁や床を保護します。」


「はい。」


テープを貼ろうとした唯だったが、思ったように真っ直ぐ貼れない。


「あっ。」


途中で曲がってしまった。


「一回剥がして。」


平山が優しく声を掛ける。


「養生は見た目じゃないんです、隙間があると意味がない。」


「はい。」


頷いた唯が、ぎこちなく貼り直し終えると、いよいよ荷物の搬出が始まる。


「御崎さん。」


平山が段ボールを指差した。


「まずは軽い物からお願いします。」


「はい。」


唯は両手で抱えるように持ち上げる。


思ったより軽かったのか、少しホッとした表情になって、そのまま玄関へ向かおうとした時だった。


「ストップ。」


俺が声を掛ける。


「その持ち方。」


「えっ?」


「箱の底をちゃんと持たないと。」


唯が自分の手元を見る。


「中身は見えない。底が抜けたら終わりだ。」


「は、はい。」


今度は慎重に、一歩ずつ玄関へ向かう唯。実を言えば、俺が初めて現場に入った時、最初に注意されたのがこれだった。ふと、懐かしさが込み上げて来た。
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