Thirty’s
「今日はお疲れさまでした、カンパ~イ。」


平山の明るい声が響く。営業所に戻り、片付けと報告を終えた俺たちは、奴に誘われるまま、打ち上げの飲み会に来ていた。正直、唯とそういう席に行くことに、躊躇する気持ちはあったのだが、ふたりきりではなかったし、世話になった平山に礼も言いたかったから、付き合うことにした。


「御崎さん。」


「はい。」


「正直言うと。」


平山は頭を掻きながら笑う。


「最初は、本部の方の見学かと思ってました。」


苦笑する唯。


「でも、最後まで逃げませんでしたね。」


「・・・。」


「現場は、そういう人は好きですよ。」


その平山の言葉に、一瞬驚いたような表情を浮かべた唯は


「ありがとうございます。」


次に嬉しそうにそう言うと、頭を下げていた。


それからは賑やかな席となって、俺たちは飲んだ。唯も楽しそうに平山たちと話している。そんな彼女に、ふとかつての大学のサークル時代の姿がダブる。


こんなにリラックスした席で、時を過ごすなんて、唯にとってはいつ以来なんだろう・・・ふと、そんな思いが浮かんで来る。


宴もたけなわとなった頃、唯が俺に身体を寄せて来る。


「今日さ。」


「うん?」


「初めて、お客様に『ありがとう』って言われた。」


「そうか。」


「サーチに来てから、数字を見たり、報告書を見たり、会議をしたり、そんな毎日だった。」


「・・・。」


「もちろん、それも大事なことなんだけど・・・。」


ここで、一度言葉を切った唯は


「今日初めて、この会社は、お客様の『ありがとう』で成り立ってるんだって実感した。」


そう言って、俺を見る唯に、俺は何も答えなかった。でもそのひと言を聞いて


(今日、連れて来て良かった。)


心底、そう思った。そして、もう1つ。ひと皮むけた彼女を支えて行きたい・・・とも。
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