Thirty’s
第十三章 穏やかな寝顔の隣で
昼食を終え、オフィスに戻ると、TVからニュ-ス速報のテロップが流れて来た。


『本日の内閣改造で山本慎一厚生労働大臣の留任が内定。』


「お、決まったか。」


誰かの声がする。今回の人事で、当初は退任すると見られた山本大臣だったが、ここ数日は、留任の公算が高まっていると新聞でも報じられていて、実際にその通りになったわけだ。


「ということは、政務秘書官とももうしばらくのお付き合いですね。」


茉莉の言葉に


「そういうことになるね。」


私は頷く。正直、面倒くさいなとは思っているが、だからと言って、どうすることもできないわけで、現実を受け入れるしかない。大臣が変わろうと変わるまいと、自分が動かなかった以上、私はここで、自分の為すべき仕事を全力でやるしかないのだ。


こうして、私がデスクでパソコンとにらめっこをしている間に、改造人事発表、認証式、新大臣の記者会見と流れるように事は進み、大臣が省に戻って来た時は、もう夜の九時をとっくに過ぎていた。


さすがにこの日は、改めての着任挨拶を省内にする時間はなく、事務次官や幹部たちと簡単な打ち合わせをして、引き上げたとの報が流れると、大臣官房でも仕事を切り上げ、帰宅の途に就く面々が増えて来た。


かく言う私も、パソコンを閉じ、ひとつ伸びをしてから、さて、夕飯はどうしようかと思案しながら、席を立とうとすると、前の電話が鳴りだした。


今更、何と思いながらも無視するわけにもいかず、電話を取ると


『加奈ちゃん、山本だけど。』


この時間には、もうあまり聞きたくない声が、耳に響いてきた。
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