Thirty’s
数分後、私は大臣政務秘書官室にいた。話があるからと、呼び出されたのだ。


「帰り間際に悪いな。」


「いえ。でも、大臣とご一緒に帰られたんじゃなかったんですか?」


「まぁね。」


私の言葉を、曖昧にやり過ごすと


「驚いた?」


「何がですか?」


「親父の留任。」


ニヤニヤしながら聞いて来る。


「退任の方向とお聞きしてましたけど、ここ数日の報道では留任と出てましたから。」


「マスコミも甘いよな。親父と総理との関係の深さが全然わかってない。」


「はぁ。」


「退任なんかありえないんだよ。」


「・・・。」


「俺は最初から読めてた。」


「・・・。」


「そして君も残ることになる、そう思ってたんだ。」


「えっ、どういうことですか?」


秘書官の言いたいことの意味が分からず、思わず問い返す。


「まぁ、そのうちわかるよ。」


そう言って、また私にニヤリと笑いかけて来る秘書官。その笑顔に、言葉を失っていると


「とにかく、加奈ちゃんを頼りにしてるんだ。引き続き、よろしく頼むよ。今日はもう遅いから、今度近いうちに、飯でも食いながら、ゆっくり話そう。じゃ、今日はお疲れ。」


と言うと、私の肩をポンと叩いて、秘書官は私を送り出した。


(結局、何が言いたかったの、あの人・・・?)


私は首をひねりながら役所を後にした。
< 124 / 238 >

この作品をシェア

pagetop