Thirty’s
連れて来られたのは、高層ビルの最上階にある、夜景も眩しいフレンチレストラン。


「先輩、困ります・・・。」


困惑を隠さずにまた言うけど


「厚労大臣政務秘書官が、昔みたいに居酒屋に誘うと思ってたのかよ。」


「・・・。」


「さ、行こう。」


仕方なく、後に続いて、店に入ると、当たり前のように窓際の特等席に案内され、私は居心地悪げに腰を下ろす。


「お飲み物は?」


「俺は車だし、彼女も呑まない。さっそく料理を始めてくれ。」


「かしこまりました。」


踵を返して、ボーイが離れて行くと


「加奈は昔から酒が得意じゃなかったものな。それとも、官僚になって鍛えられたか?」


先輩が聞いて来る。


「いえ、ありがとうございます。」


私は軽く頭を下げるが、自分でもわかるくらい、表情は固い。


「とにかく今日は、前からの約束を果たすのと昔話をするのが、目的なんだからさ。」


思わず、苦笑いしながら先輩が言うけど、こればかりはどうしようもない。


「だから、そんな顔してるな。せっかくの景色と料理が台無しになるぜ。」


「・・・わかりました。」


私は取り敢えず、そう答えるしかなかった。
< 127 / 238 >

この作品をシェア

pagetop