Thirty’s
実際、先輩は食事の間、仕事向きの話題や恋愛めいた話は全く口にすることなく、大学時代のサークルの思い出話やかつての仲間、先輩たちの近況を面白おかしく語ってくれ、私の気持ちは段々、ほぐされて行った。
「先輩は、なんでみんなのことに詳しいんですか?」
「政治家を目指す者にとっては、人間に興味を持ち、人間をよく見ることこそ、一番求められることなんだ。身近な人間、親しい人間のことを知るのはイロハのイってことさ。」
「なるほど。」
なんてことを話している内に、フルコ-ス料理は私たちの胃袋の中に納まって行った。大変な美味であり、また窓の外に広がる夜景の美しさは、正直筆舌に尽くしがたいものだった。
なんだかんだと楽しい時間を過ごした私だったが、いざお会計の段になると、途端に現実に引き戻される。さすがに、「ご馳走様でした」のひと言で済まされる金額ではなかった。
「先輩、いくらなんでも、これはご馳走になれません。せめて私の分は・・・。」
「おいおい、俺に恥をかかせる気かよ。上司、先輩の方から誘ったら、そこの会計は持つ。それが官僚の世界の不文律なんだろ?」
「でも・・・。」
「郷に入れば、郷に従えだ。」
「・・・わかりました。本当に済みません。」
ここで押し問答をしていても仕方がない。私は引いたが、後日ちゃんとお礼をしないと、思いながら、店を出る。
エレベ-タ-を降り、送って行くという先輩に、丁重にお断りを入れ、改めて今日のお礼を言うと
「まぁ、今日は張り切っちまって、かえって加奈に気を遣わせちゃったな。次回からは、もう少し、肩の凝らないところにするよ。」
笑顔で先輩に言われて、私は思わず息を吞む。
「先輩は、なんでみんなのことに詳しいんですか?」
「政治家を目指す者にとっては、人間に興味を持ち、人間をよく見ることこそ、一番求められることなんだ。身近な人間、親しい人間のことを知るのはイロハのイってことさ。」
「なるほど。」
なんてことを話している内に、フルコ-ス料理は私たちの胃袋の中に納まって行った。大変な美味であり、また窓の外に広がる夜景の美しさは、正直筆舌に尽くしがたいものだった。
なんだかんだと楽しい時間を過ごした私だったが、いざお会計の段になると、途端に現実に引き戻される。さすがに、「ご馳走様でした」のひと言で済まされる金額ではなかった。
「先輩、いくらなんでも、これはご馳走になれません。せめて私の分は・・・。」
「おいおい、俺に恥をかかせる気かよ。上司、先輩の方から誘ったら、そこの会計は持つ。それが官僚の世界の不文律なんだろ?」
「でも・・・。」
「郷に入れば、郷に従えだ。」
「・・・わかりました。本当に済みません。」
ここで押し問答をしていても仕方がない。私は引いたが、後日ちゃんとお礼をしないと、思いながら、店を出る。
エレベ-タ-を降り、送って行くという先輩に、丁重にお断りを入れ、改めて今日のお礼を言うと
「まぁ、今日は張り切っちまって、かえって加奈に気を遣わせちゃったな。次回からは、もう少し、肩の凝らないところにするよ。」
笑顔で先輩に言われて、私は思わず息を吞む。