Thirty’s
「お帰り。」


私が帰宅すると、リビングでパソコンとにらめっこしていた総一郎が声を掛けて来る。


「ただいま、まだ起きてたんだ?」


「うん。明日、上司に提出する書類が終わらなくてさ。」


「そうなんだ。」


「それに、どうせなら加奈の顔を見たかったし。」


そう言って、優しく微笑む総一郎。


「風呂沸いてるから、入って来ちゃいなよ。僕ももうすぐ終わるから、そしたら休もう。」


「うん、わかった。じゃ、そうさせてもらう・・・。」


「ごゆっくり。」


そう言うとまたパソコンに向かう彼を、私は少し、なんとも言えない気持ちで眺めていると


「どうした?」


彼が声を掛けて来る。


「ううん、何でもない。じゃ、お風呂頂いちゃうね。」


そう言って、私はいったん寝室に入る。着替えて、バスル-ムに向かい、湯舟に浸かり、髪を乾かし、リビングへ戻ると、総一郎はパソコンを閉じて立ち上がった。


手をつないで、寝室に入り、ベッドに身体を滑り込ませると、自然と向き合う。


「お疲れ。」


「総一郎も。」


「そうだ。土曜日に一緒に見る映画のチケット、取ったから。いい席が取れたよ。」


「本当?ありがとう。」


「楽しみだね、じゃおやすみ。」


「おやすみなさい。」


見つめ合い、軽く唇を触れ合うと、総一郎は瞳を閉じる。そんな彼に私がソッと身を寄せると、優しく包んでくれる。彼の腕の中で、私も瞳を閉じた。
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