Thirty’s
間もなく、総一郎の寝息が聞こえて来る。安らかな、優しい寝顔。でも、今の私の心は乱れている。


(なんで、なんでそんな普通なの?総一郎。)


唯さんと再会していた。ううん、それは不思議じゃない。同じ本社ビルで働くようになったんだから、会うことだってあるだろう。


だけど、一緒に出張するような立場になってるなんて聞いてない・・・。


どうして、何も話してくれないの?


『そろそろソウくんを返して下さい。』
『彼の横にいるべきなのは、この私なんです。』


ふいに、あの日の唯さんの言葉が蘇る。


そっか・・・このこと、私、あなたに言ってなかったんだよ、ね。


なのに今の私は、


「どうして話してくれなかったの?」


そんなことを思ってしまっている。


(ずるいよね、私。)


自分だって、言わないで済ませちゃったのに・・・。


それなのに、心はもう言うことを聞いてくれない。


総一郎が唯さんと肩を並べて歩く姿が、頭の中に浮かんでは消え、消えては浮かんで来る。


隣では何も知らない総一郎が、穏やかな寝息を立てている。


その寝顔を見るたびに、胸が締めつけられる。


千々に乱れた心のまま、私はいつまでも眠ることができなかった・・・。
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