Thirty’s
第十四章 思いがけない再会
現場研修を終えてからというもの、俺は河北さんの指示で、唯のサポ-ト役として動くことが多くなった。


「沖田くん、専務は午後から取引先との打ち合わせだから、その前にこの資料だけ確認しておいて。」


「はい。」


「終わったら、そのまま専務と一緒に役員会議へ入って。」


「わかりました。」


そんなやり取りが、いつしか当たり前になっていた。


もちろん肩書きが変わったわけじゃない、俺は相変わらず営業本部総合企画室の一社員だ。


でも、唯が判断に迷えば相談を受け、現場の話になれば意見を求められる。


「ソウくん。」


誰もいない会議室で、小さく俺を呼ぶ唯。


「この資料なんだけど、ここの数字、本当にこれでいいかな?」


「そこじゃなくて。」


「えっ?」


俺は資料を指差した。


「現場は数字より、その後の人員配置の方が気になるはずだから、そのことを入れた方が説得力があると思うよ。」


「そうか、なるほど。」


唯は大きく頷くとすぐにパソコンを開き、修正を始める。


その横顔を、俺は少し見つめた。ちょっと前まで、俺は唯に「ソウくん」と呼ばれることにも、ふたりでいる時間にも抵抗を覚えていた。


でも今は、そんなことは些細なことに思えるようになっていた。


唯は本気で、この会社を良くしようとしている。現場を知りたいと言い、営業にも同行し、引っ越し現場でも最後まで逃げなかった。


そんな姿を見た今は、支えたいと思っていた。
< 132 / 238 >

この作品をシェア

pagetop