Thirty’s
実は先日、河北さんが俺にポツリとつぶやくように言った。


「沖田くん、これから言うことは、あくまで私の想像。そのつもりで聞いてくれる?」


「はい。」


「白鳥社長は、なんで唯さんを専務として、ウチに送り込んだと思う?」


「専務に現場を、営業を勉強させて、後継者になる修行をさせる為、じゃないんですか?」


「表向きはね。でも、私は違うと思う。」


「どういうことですか?」


「社長は唯さんをはっきり言って、後継者としては買ってない。だから、お前じゃ無理だ、そう引導を渡す為なんじゃないかって思ってる。」


「そんな・・・。」


俺は思わず、反撥の声を上げる。


「私も自分の想像が外れてることを祈るけど、でももしそうだとしたら、唯さんがあまりにも気の毒。」


「はい。」


「だから私は、唯さんがあなたを呼ぶことに反対しなかった。」


「えっ?」


「公私混同の面があることは否定出来ないけど、でも唯さんは純粋にあなたの力をビジネスパートナ-として求めていたのも事実だから。彼女にベストの布陣で戦わせてあげたかったんだ。」


「河北さん・・・。」


「頼んだわよ、沖田くん。」


「・・・かしこまり、ました。」


俺は頷くしかなかった。


役員会議が終わり、俺はいったん唯のもとを離れ、営業総合企画室に戻ろうとしていた。すると


「沖田さん。」


俺を呼び止める声がする。振り向いた俺の視線の先には、見覚えのある男が立っていた。


「山本さん。」


厚生労働大臣政務秘書官、山本慎太郎。


「こんにちは。今日も社長に御用ですか?」


「いや。今日は沖田さん、君に話があって来たんだ。」


「俺に、ですか?」


なぜ・・・戸惑いを隠せないでいる俺に、山本さんは笑顔で近づいて来た。
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