Thirty’s
「沖田くん・・・沖田くん!」


俺を呼ぶ声がする。


慌ててその方を見ると、河北室長が難しい顔で立っている。


「は、はい。何でしょう?」


「何でしょう、じゃないわよ。どうしたの?戻って来てから、なんかぼんやりしてるけど?」


「そうですか?すみません、全然大丈夫です。さ、仕事しないと。」


「もう定時よ。」


「えっ?」


驚いて、時計を見ると、定時を15分ほど過ぎているから


「す、すみません。」


室長に頭を下げる。そんな俺を見て


「もういい、今日はもう上がりなさい。」


ひとつため息を吐いてから、室長は言う。


「いえ、大丈夫です。」


「どう見ても大丈夫じゃないでしょ。異動して来てから、いろいろあったから疲れてるんでしょ。そんな時に無理しても、ロクなことにならないから、とにかく今日は帰りなさい。」


「でも・・・。」


「これは上司命令。とにかく今日は少しリフレッシュして、明日からまた頑張りなさい。」


「・・・わかりました。では、今日は失礼させていただきます。」


確かに、このまま机に向かっていても、仕事にならなそうなのは、自分でもわかる。と言って、明日になって気分一新で頑張れるようになるかといえば、その自信もなかった。


それでも、俺は室長や周囲に挨拶をすると、彼らの心配そうな視線に見送られながら、オフィスを後にした。
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