Thirty’s
季節は初夏から梅雨、そして本格的な夏へと移り行こうとしている時期、日はまだまだ高い。さて、これからどうしようかと思うが、正直真っすぐ家に戻ろうという気にはならない。少し悩んでから、スマホを取り出した俺。


『ごめん。今日は夕飯食べてから、帰るから。』


確実にまだ仕事中の加奈に、そうメッセ-ジを送ると、歩き出した。いや、歩き出したはいいが、行く当てなどない。これから本当にどうしようか、悩みながら、取り敢えず駅に向かう。


駅ビルが見えて来て、そのまま中に入り、パブリックスペ-スのベンチに腰掛けた俺は、再びスマホを取り出すと、ひとつの番号をタップする。たぶん、繋がらないだろうなと思いながら待つことフォーコ-ル目。


『もしもし、どうした?』


聞こえて来たのは久しぶりの声。正月に、高校時代の仲間たちと集まって以来だろうか?


「突然すまん、今どこだ?」


『家だよ、今日は上がりだからな。』


「じゃ、由夏さんいるよな?」


『ああ。今、夕飯作ってくれてる。』


「そうか、じゃ邪魔しちゃ悪いな。切るよ。」


『なんだよ、それ?大丈夫だよ、何かあったのか?』


「いや、ちょっとお前の声が聞きたくなっただけ。聞いたからもういいよ。じゃ。」


そう言うと、俺は電話を切った。
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