Thirty’s
「もう一つだけ、現実的な話をしよう。俺は君を優秀な官僚だと思ってる。将来は局長はおろか、事務次官だって夢じゃないだろう。だが・・・官僚の出世競争はシビアだ。実力、能力だけで生き残れるほど、甘くはない。後ろ盾のようなものはどうしたって必要になる。そして俺なら、そうなれるはずだ。将来、夫婦で大臣、次官として、コンビを組むなんてことになったら、最高じゃないか。」


そう言って笑う秘書官の顔を、しばらく見ていた私だったが


「ひとつ教えて下さい。」


と静かに口を開いた。


「あなたの話を聞いて、彼は、総一郎はなんて答えたんですか?」


真っすぐに秘書官を見て、尋ねる。


「わかりました。では、加奈のことはよろしくお願いします。」


「えっ?」


「なんて、言うはずないだろう。君たちがお互いを思い合ってることくらい、俺だってわかってる。」


「・・・。」


「俺が沖田くんの立場でも、当然『ふざけるな』っていう話だ。君だって、今素直に俺の話を受け入れられるはずもない。そんなことは百も承知だ。だが、君たちがこれからの人生を自分たちらしく歩んで行くために、君たちはお互いにとってふさわしい相手なのか?」


「どういう意味ですか?」


「今、沖田くんは白鳥唯さんを助けて、日々奮闘している。そんな彼は本当に生き生きしているように、俺の目には映った。」


その秘書官の言葉に、私は思わず息を呑んだ。
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