Thirty’s
「俺は唯さんを子供の頃から知っている。天真爛漫な、本当にご両親に愛され、可愛がられて育ったお嬢様だよ。そんな彼女が今、SHIRATORIコンツェルンという一大企業群を背負おうと懸命に精進している姿は、かつての彼女からは想像も出来ない。」


「・・・。」


「そんな彼女を懸命に支え、守ろうとしている沖田くんの姿は美しい。俺は正直にそう思った。そんな彼が、加奈の横で、同じように輝けるのか?パ-トナ-として、君を支え、守ってやれるのか?残念ながら、俺にはそうは思えなかった。加奈のパートナ-は、彼には荷が重い、そうとしか思えなかった。」


秘書官の言葉が、容赦なく私の心を打ちのめす。


『恋愛は身の丈に合った人と。そう決めてるから。』


かつて、総一郎はそう言って、私の告白を受け入れてくれなかった。でも、その言葉を結局は乗り越えて、今の関係を築いて来たつもりだった。なのに、ひょっとしたら、それって私の独り善がりだったの?


『もうお気付きですよね?あなたとじゃソウくんは幸せになれないって。』


そんな唯さんの言葉も甦って来る。そんなことないって、懸命に否定して来たけど、今、現実として、総一郎は唯さんの側にいて、唯さんを支えていて。でもそのことを未だに私に話してくれない・・・。


「俺のプレゼンは、これで終わりだ。最後にもう一回言う。俺は君を妻にしたいと思っている。そこには打算も損得勘定もある。でも、それだけじゃないことも間違いはない。俺は自分が沖田くんより加奈のパートナ-にふさわしいと自負している。そして、君のことが好きなんだ。そのことはハッキリと伝えておく。あとは・・・君が、君たちがよく考えてくれ。」


そう言って秘書官は、真っすぐに私を見つめる。だけど、そんな彼の言葉が、私には遠くから聞こえていた。
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