Thirty’s
「そんな藪から棒な話ある?相手は誰なのよ?」


信じられないと言わんばかりの由夏に


「山本さんっていうウチの大臣の政務秘書官で、大臣の長男。つまり後継者よ。ついでに大学のサークルの先輩。」


と説明すると


「それはまた、随分高貴なお方から見初められたんだね。」


いかにも、由夏らしい言い回し。


「それにしてもいきなりプロポ-ズは凄いね。学生時代から、加奈のこと狙ってたってこと?」


「そうじゃないみたいだけど、役所で再会してからは、今にして思えば、虎視眈々と狙われてたのかなとは思う。」


「なるほど・・・。」


「それで問題はさ、そのプロポ-ズの前に、その人が総一郎のところに押しかけたらしいのよ。」


「なかなかの行動派だねぇ。」


「ちょっと真面目に聞いてよ。」


「聞いてるよ、それで?」


「そこで、山本さんが総一郎に言ったんだって。『これからの加奈の人生に必要なのは君じゃなくて、俺だ』『加奈が君を選ぶことが、本当に幸せなことだと、君は自信を持って言えるのか?』って。」


「その山本さんの言葉に対して、沖田くんは、はっきりとした返事が出来なかった。違う?」


「えっ?」


その言葉にびっくりすると


「たぶん、そんなところかなって。」


そう言って、由夏はひとつため息を吐く。


「加奈は唯さんのことを話してくれなかったことより、その沖田くんの態度に傷ついて、そして失望してる。そういうことだよね?」


その言葉に、頷く。


「わかった。」


と言った由夏は、ちらりと時計に目をやると


「お腹すいたでしょ?」


「えっ?」


「私はお腹すいた。取り敢えず、何かおいしいものでも食べに行こう。」


「由夏・・・。」


「話はそれから。ちょっと着替えて来る。」


そう言って、ニコリと微笑むと、由夏は立ち上がった。
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