Thirty’s
今夜も加奈が帰って来ない。


電話は不通、LINEは既読すらつかない。彼女の実家にも連絡してみたが、来てないし、何の連絡もないとのこと。まさか、嘘はつかれてないだろうから、だとしたら・・・。


(今から役所に行ってみるか、それしかない。)


改めて時計を確認して、心を決めた俺は、身支度を整えるべく立ち上がったが、その瞬間、携帯が鳴る。


(加奈か!)


期待を込めて見た、待ち受け画面に表示されていた名前は意外だった。それでもすぐ


「もしもし。」


と呼び掛けると


『ご無沙汰。』


岩武(いわたけ)さん・・・じゃなくて、由夏さんの声が聞こえて来る。


『愛しの彼女が音信不通で心配でしょ?』


「それは・・・。」


『ご推察の通り、加奈は私の所にいる。取り敢えず、安心して。』


正直、ひょっとしたら悠さんの所かなという思いはあったのだが、まさか仙台まで行ってるとは・・・。


「それで、加奈は?」


『今、シャワ-浴びてる。明日も仕事休んでるそうだから、ウチの旦那もいないし、今夜はこっちで預かるよ。』


「ごめん、ありがとう。」


携帯を手に、思わず頭を下げてしまう。


『明日はちゃんと送り返す。ちゃんと帰るんだよって、言い聞かせるから、それは安心して。』


「うん。」


『沖田くん。』


「えっ?」


『お説教するつもりはないけど、「総一郎がわからなくなった」なんて、加奈に言わせないで。』


「由夏さん・・・。」


『あの子の親友としてのお願いだから。』


「うん・・・わかった。」


『じゃ、おやすみ。』


「おやすみ・・・あっ、由夏さん。」


『うん?』


「いろいろ、ありがとう。」


『その言葉はまだ早い。』


「えっ?」


『まだ何も解決してないじゃない。解決できるのはあなたと加奈だけ、そうでしょ?じゃ。』


そんな言葉を残して、由夏さんは電話を切った。
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