Thirty’s
「じゃあ、どういうこと?」


由夏が更に問いかけて来るから


「山本さんのことを好きとか、そういうことじゃない。」


私ははっきりと言い切った・・・つもりだったのに


「でも・・・。」


という言葉が次に口について出て、自分でも驚いてしまう。


「でも?」


「・・・ううん、何でもない。」


私は首を振った。そんな私を、由夏は少し見ていたが


「いきなりちょっと意地悪なこと、言っちゃったかな?」


「由夏・・・。」


「でも、わかってると思うけど、私は悠ほど優しくないからね。」


そう言って、フッと微笑んだ由夏だったが


「それに、古傷をえぐるようで悪いけど、加奈には前科があるからさ。」


すぐにまた厳しい言葉が飛んで来る。


「あなたは前に、沖田くんと付き合いながら、他の男性、それも既婚者に靡いてしまったことがある。私の警告を無視して。」


事実だ、私は俯いてしまう。


「その時のきっかけも、『沖田くんの気持ちがはっきりしない、わからない』だったよね?」


「うん・・・。」


「前の時みたいになってからじゃ遅いからね、だから言わせてもらった。気を悪くしたなら、ごめん。」


「ううん、大丈夫。由夏、ありがとう。」


私が笑顔で答えると、由夏もホッとしたように頷いた。
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