Thirty’s
「責めないんだ?」


堪りかねて言い出したのは、私の方だった。


「俺がいるのに、なんでそんなの即答で断らないんだって。」


「責めたって仕方ない、そんなの責めることじゃない。」


「なんで!」


「だって、山本さんのプロポ-ズを加奈は、もちろん即答でOKもしなかったけど、でも断りもしなかった。それが答えじゃないか。」


「どういう、意味?」


「山本さんは君のことを好きだって、言ったんだよね?」


その総一郎の問いに頷く私。


「僕だって、君のことが好きだよ。結婚を前提にこうやって一緒に暮らしてるんだ、僕は山本さんより君を好きだって、自信もあるつもりだよ。そして少なくとも、現時点では君だって、山本さんより僕のことを好きでいてくれてるとうぬぼれてる。でも君は、それでも山本さんからのプロポ-ズを断らなかった。」


「総一郎・・・。」


「それは彼の求婚が、君の中でありだったって、ことだろ?彼との未来に、君が十分魅力を感じたってことなんじゃないのか?」


『違う』って言いたかった。でも・・・


そう、『でも』なんだよ。


『山本さんのことを好きとか、そういうことじゃない。でも・・・。』


仙台で由夏に問われて、私はこう答えた。『でも』の後、自分が何を言おうとしたのか・・・列車の中で、ずっと考えた。ううん、本当はもうわかってたんだよ。ただ、それを自分で認めたくなくて、目を背けていただけ。


『でも』総一郎は、感情を高ぶらせることもなく、見事にそれを言い当てた。そんな彼に、私は言葉を失ってしまった。
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