Thirty’s
「どうしたんですか、急に?」


不思議そうな声を出した茉莉。


「いや、どうなのかなって単純に興味があって。」


「それは・・・全く考えないってことはないと思います。」


「やっぱり、そうかな?」


「相手の学歴とか職業、収入・・・相手が本気で好きになったら、気にならないかもしれないですけど、でもその前段階だったら、無意識の内に、そういう要素でチェックを入れてるんじゃないでしょうか?」


「そういうもの、か・・・。」


ポツンと私が呟くように言うと


「でも、加奈さんなら代議士夫人でも大臣夫人でも、全然イケると思いますよ。秘書官だって、そう思って、加奈さんのこと口説いてるんでしょうから。」


私がそこを悩んでるのだと勘違いした茉莉が、声を励まして言ってくれるが、私の聞きたかったことは違う。


「そっか、ありがとう。」


私は笑顔で言うと、箸を動かし、その話題を打ち止めにした。


仕事が終わり、ひとりで夕飯を済ませた私が帰宅すると部屋の灯りは点いていない。


(帰ってないんだ・・・。)


総一郎の姿が見えないことに、ホッとしてしまった自分がいる。


あの日以来、私たちはまともに口をきいてない。お互いに避け合い、総一郎は寝室にも入って来ずにリビングのソファで寝ている。気まずい時間が流れ、こうなると、すれ違いが解消されたことがかえって仇になってしまった。この皮肉な現実に、またため息が漏れて来る。


正直、帰って来たくなかったけど、でも今の私の帰る場所はこの部屋、総一郎と暮らすこの部屋なんだから・・・。
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