Thirty’s
第二十章 迷い
「桜井くん。」


その日、いつものように執務中だった私に、それまで席を外していた課長から声が掛かった。


「はい。」


振り向いた私に


「ちょっと。」


と手招きをして来る。何ごとか首を捻りながら、席を立ち、オフィスの外に出ると


「スマンがちょっと会議室まで行ってくれんか?」


「どういうことでしょうか?」


「その、なんだ・・・政務秘書官がお待ちだ。」


言いにくそうに、課長が言って来る。


「・・・そうですか、わかりました。」


私は頷いて、会議室に向かう。


(いったい何だろう?)


それが正直な思い。今まで、気軽に内線で秘書官室に呼びつけていたのに、今日はわざわざ課長を介して会議室に、それも勤務時間中に・・・。


首を捻りながら、会議室のドアをノックすると


「入ってくれ。」


秘書官の声が返って来て


「失礼します。」


入室して、一礼した私に


「スマンな仕事中に、大事な話だったんで。とりあえず、掛けてくれ。」


そう言って、私に椅子を勧めて来た秘書官は、私の前に腰かけた。


「それでお話とは?」


「まず最初に聞く。沖田くんと話はしたのか?」


『あとは・・・君が、君たちがよく考えてくれ。』・・・あの時の言葉の答えを求められていることは明らかだったので


「話はしましたが、結論は出てません。」


率直に、そう答えるしかなかった。
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