Thirty’s
それから、あっという間に退勤時間が過ぎ、二時間ほど残業すると、私は席を立った。
帰ろうとして、ふと既に空席となっている課長のデスクが目に入る。
「なんか、大変そうだねぇ。」
山本さんとの話を終えて、オフィスに戻ると、課長に声を掛けられた。
「差し出がましいことを聞いて、申し訳ないんだが、率直に言ってどうなんだい、君の正直な気持ちは?」
ちょうど昼休みで、周囲に人がいなかったとはいえ、直球の質問をされて、思わず驚くが
「正直、いろいろ戸惑いがありますが、よく考えてみたいと思ってます。」
と穏当な返事をしておく。
「私もさっき、そういう話になってるって聞いて、まぁいろいろ腑に落ちたことがあったよ。」
「と、おっしゃいますと?」
「こんなことは本当は漏らしたらいけないんだが、実は今回、君がウチに残ったのは、秘書官が大臣を通じて、強力に人事に掛け合ったからなんだよ。」
(そうだったんだ・・・。)
課長の言葉は、驚きの反面、やっぱりそうだったんだという思いを、私に抱かせた。
「それでどうなんだ?例えば、この話をお断りする選択肢は、君にありそうなのか?」
「ノ-と言う選択肢が全くないとは、私は認識してません。」
「そうか、それならいいんだが・・・。」
ここで、いったん言葉を切った課長は
「まぁ君にとっては、決して悪い話ではないと思うから、よく考えてみなさい。」
と、取って付けたように続けると、そそくさと離れて行った。
そんな光景を思い出しながら、役所を出た私に
「加奈さん!」
と声が掛かる。既に先に退勤したはずの茉莉だ。
「どうしたの?」
「やっぱりだ。」
「えっ?」
「加奈さん、最近帰る時、全然嬉しそうじゃないですよね。」
その彼女の言葉に、思わず固まってしまった私に
「ということで、ご飯、食べに行きましょう!」
不釣り合いに明るく言った茉莉が、手を引っ張って来た。
帰ろうとして、ふと既に空席となっている課長のデスクが目に入る。
「なんか、大変そうだねぇ。」
山本さんとの話を終えて、オフィスに戻ると、課長に声を掛けられた。
「差し出がましいことを聞いて、申し訳ないんだが、率直に言ってどうなんだい、君の正直な気持ちは?」
ちょうど昼休みで、周囲に人がいなかったとはいえ、直球の質問をされて、思わず驚くが
「正直、いろいろ戸惑いがありますが、よく考えてみたいと思ってます。」
と穏当な返事をしておく。
「私もさっき、そういう話になってるって聞いて、まぁいろいろ腑に落ちたことがあったよ。」
「と、おっしゃいますと?」
「こんなことは本当は漏らしたらいけないんだが、実は今回、君がウチに残ったのは、秘書官が大臣を通じて、強力に人事に掛け合ったからなんだよ。」
(そうだったんだ・・・。)
課長の言葉は、驚きの反面、やっぱりそうだったんだという思いを、私に抱かせた。
「それでどうなんだ?例えば、この話をお断りする選択肢は、君にありそうなのか?」
「ノ-と言う選択肢が全くないとは、私は認識してません。」
「そうか、それならいいんだが・・・。」
ここで、いったん言葉を切った課長は
「まぁ君にとっては、決して悪い話ではないと思うから、よく考えてみなさい。」
と、取って付けたように続けると、そそくさと離れて行った。
そんな光景を思い出しながら、役所を出た私に
「加奈さん!」
と声が掛かる。既に先に退勤したはずの茉莉だ。
「どうしたの?」
「やっぱりだ。」
「えっ?」
「加奈さん、最近帰る時、全然嬉しそうじゃないですよね。」
その彼女の言葉に、思わず固まってしまった私に
「ということで、ご飯、食べに行きましょう!」
不釣り合いに明るく言った茉莉が、手を引っ張って来た。