Thirty’s
それから、しばらく食欲の権化と化して、肉を頬張っていた私たちだったが、お腹が一段落したところで


「茉莉は実家通いだっけ?」


と話を切り出した。


「はい。ひとり娘なんで、パパとママがなかなか手放してくれません。夜遅くなることが多い仕事ですから、本当はもう少し近い所に引っ越したいんですけどね。」


えっ、まだパパママ呼びなのと、ちょっとビックリしたけど、そこはスル-して


「家に帰りたくないって思ったことある?」


と聞いてみる。


「ないですねぇ。ウザいなって思うことはありますけど、基本的にウチの家族は仲良しなんで。」


「私も彼氏と同棲するまでは実家暮らしだったんだけど、親と喧嘩したことなんて、何度もあったけど、でも家に帰りたくないって思ったことは私もないなぁ。」


「はい。」


「実は今、彼氏とうまくいってないっていうか、はっきり言って、もう何日もろくに口もきいてない。」


「そうなんですか。」


「それでさっき、茉莉に『最近帰る時、全然嬉しそうじゃない』って言われて、ドキッとした。顔に出ちゃってたんだなって。本当に帰りたくないんだ、正直言えば。部屋の空気は重いし、とにかく気まずいし・・・実家に帰っちゃおうかなって思ったことも何度もある。」


「・・・。」


「同じ家族なのにね。まぁ私たちはまだ結婚どころか、婚約もしてないから、正確に言えば、まだ家族じゃないのかもしれないけど、でもパートナ-として同居してるわけでしょ?でも、親に対する感情や接し方とはやっぱり別物なんだと思っちゃった。」


私はここでひとつ、ため息を吐いていた。
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