Thirty’s
「でも、加奈さんは結局、今のところは家出もしてないし、実家にも帰ってない。」


「ううん、家出はしたんだよ。あの突然休んだ時、彼氏の顔を見たくなくなって、ビジネスホテルや友だちの家に泊まってたんだ。」


「そうだったんですか?」


「でも、友だちに諭されたり、まぁ自分でもいろいろ考えて、これはもう一回ちゃんと話さなきゃって思って、家に戻った。ところが・・・。」


「話し合いがうまくいかなくて、かえって彼氏さんとの溝は深まってしまった、ってことですか?」


「そういうこと・・・。」


私はここで、だいぶぬるくなってしまったビールを口に運んだ。茉莉も肉に手を伸ばし、会話が途切れる。少しして


「加奈さん。」


茉莉が口を開いた。


「関係が更に悪化してしまったにも関わらず、加奈さんは今度は家出せず、何とか家に帰ってる。それは何でなんですか?」


「何でなんだろうな・・・?」


一瞬考えた後


「まぁ彼のこと、本当に嫌いになったわけじゃないし、喧嘩する度に、いちいち逃げ出してたら、とても家族になんかなれないだろうし。とにかく今の私の帰るべき家は、あの部屋なんだから。」


そう言って、茉莉の顔を見る。


「じゃ、加奈さんはやっぱり彼氏さんと仲直りしたいんですよね?」


「それは、ね。」


「だったら、それでいいじゃないですか。この前はダメだったかもしれないけど、また話して、それがダメでも、もう一回話して・・・諦めずに何度でもぶつかって行けば。」


「そう、なんだけど、さ・・・。」


「加奈さん?」


「仲直りして、これからも一緒にいることが、本当に彼の為なのか、ちょっと自信がなくなって来ちゃったんだよね。正直・・・。」


この言葉に、茉莉は驚いたように私を見た。
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