Thirty’s
茉莉と別れ、帰宅の途に就いた私。


重い足取りで自宅に辿り着くと、部屋から灯りが漏れている。総一郎は帰って来て、なおかつ私を待っていてくれてるということだろう。


彼は何かを話そうとしている、そう確信した私は、勇気を出してドアを開いた。


「ただいま。」


中に声を掛けると案の定


「お帰り。」


久しぶりに、総一郎が出迎えに出て来てくれる。


「夕飯、食べた?」


「うん、後輩と食べて来た。」


「そう、わかった。」


そう答えると、彼は私に背を向けて、リビングに向かって行くから、私もその後を追うように、中に上がった。


「お茶、入れるよ。」


「ありがとう。」


「それで・・・ちょっと話があるんだ。」


「そうなんだ。じゃ、手だけ洗って来るね。」


私は洗面台に向かい、彼はキッチンに入って行く。カバンを部屋に置いて、リビングに入ると、総一郎もトレイにカップをふたつ載せて、戻って来る。


そして席に着き、久しぶりに相対する。なんともぎこちない空気が流れる中


「いただきます。」


お茶をひと口すすると


「それで話って?」


私は彼に水を向ける。


「うん、実は・・・。」


一瞬間を置いた後


「少し家を空けることになったんだ。」


総一郎はやや言いにくそうに切り出す。


「どうしたの?」


「急遽、出張になってさ。」


「出張?」


「うん。専務のお供で明日から三日間、週末には戻る。」


その言葉を聞いた瞬間、頭の中が真っ白になる。


「会社の新システム導入に向けての視察なんだ。」


「唯さんとふたりで?」


思わず、そう口走っていた。


「そう、だね・・・。」


そう言って、なんとも言えない表情を浮かべた総一郎は


「君をひとりにしちゃうけど・・・ごめんな。」


そう言って、そそくさと立ち上がるとリビングを離れて行く。


(何よ、それ・・・。)


何か言わなきゃ、何か言いたいのに・・・私はそんな彼の後ろ姿をただ見送るだけだった。
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