Thirty’s
波乱はむしろ、退庁直後に起こった。


「お疲れ様です。」


三嶋さんだ。


「お出迎え、ありがとう。」


私が涼しい声で言うと、三嶋さんはカチンと来た様子で


「総一郎が唯さんと出張に行ったんですって!」


噛みつくように言って来るから


(なんでこの人、こんなにいろいろなことを知ってるんだろう?)


内心疑問に思いながら


「悪いけど、役所の前で大きな声、出さないでくれるかな。取り敢えず、どこか入らない?私、お夕飯食べたいし。」


と言うと、スタスタと歩き出したから


「ちょ、ちょっと。」


焦りながら、三嶋さんもついて来る。結局、私たちが入ったのは近くの居酒屋。ここなら役所の前よりは、人目を気にせず話せるだろう。


「なんで止めなかったんですか?」


席に着くなり、三嶋さんが口を開く。


「止めるって、どうやって?」


「えっ?」


「デート旅行にでも行くって言うんなら、ふざけるなって話だけど、業務の出張でしょ?部外者の私にどうしろって言うの?」


冷静な口調の私に、三嶋さんはいよいよ苛立った様子で


「こんなのデート旅行と変わらないですよ!」


と言い返して来る。


「かもね。」


「かもねって・・・で、どこ行ったんですか?」


「聞いてない。」


「聞いてないって・・・。」


「聞いてどうするの?」


「邪魔しに行きます、絶対にくっつけないように。」


真面目な顔で言うから、さすがに呆れ


「あなた、真面目に仕事してるの?」


そう言ってやると


「なっ・・・。」


言葉を失った三嶋さんは、少し私を睨むように見ていたけど


「余裕があるんですね、随分。」


と言って来る。


「あるわけないじゃない。」


「えっ?」


「私だって、あなたと同じ。今頃、あのふたりどうなってるんだろうって考えたら、正直おかしくなりそうだよ。」


「桜井さん・・・。」


「でも、今はどうしようもないじゃない。」


ため息が出る。
< 190 / 238 >

この作品をシェア

pagetop