Thirty’s
でも通話はつながったまま。自分から切ることも出来ずに、スマホを握りしめていると


『加奈は戦わないんだ?』


冷たい声が耳に響いて来る。


『って、由夏なら言うよ。絶対に。』


「悠・・・。」


『「由夏が本当に塚原くんのこと、諦められたんなら、何にも言わないよ。忘れられるって言うから、それでいいよ。でも、全然そんなんじゃないじゃない。だったら戦うべきだよ!」・・・かつて、塚原くんの心を失ったって思い込んで、彼を諦めてた由夏を、こんな言葉で叱咤した人がいたって、あの子から聞いたことがある。』


「・・・。」


『今の言葉、由夏を加奈に変えて、塚原くんを沖田くんに変えたら、今のあなた達そのままじゃない。違う?』


「・・・。」


『これ以上、私から言うことはないよ。あとは加奈がかつての自分の言葉に自分で応えるのか、それとも・・・それはもう加奈が決めること。』


「・・・。」


『明日仕事なのに、遅くまでごめんね。じゃ、おやすみ。』


そう言って、私の返事を聞くことなく、悠は電話を切った。


(やられたな・・・。)


正直、ぐぅの音もでなかった。まさか、かつての自分の言葉をぶつけられてしまうとは・・・さすがは我が親友、侮れない、な。


(そうだよ、総一郎にとって、誰といるのが幸せなのか、じゃない。まずは私自身が、誰と一緒にいたいのか、誰と一緒にどんな人生を歩むことが幸せなのか、それを考えるのが最優先。だって、私の人生なんだから・・・。)


考えてみたら、至極当たり前の結論に達しつつある私は、目の前の霧が晴れるような思いだった。
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