Thirty’s
「考えてみれば、身に余る光栄だよな。」


「またそんなことを言う、もっと自分に自信を持ちなよ。」


「それが出来れば苦労しない。性分なんで。」


そう言って苦笑いを浮かべた俺だったが


「でも・・・今回ばかりは、このまま引き下がるわけには行かない。やっと決心がついた。」


決然と言うと、ハッとした表情で唯が俺を見た。


「自信はないよ、やっぱり。でも帰ったら僕は加奈に言う。『君と一緒に居たい、君と幸せになりたい』って。こんな言い方しか出来ないけど、ね。だからごめん、僕はやっぱり・・・。」


「ダメだったら?」


「えっ?」


「そんな自信のない人なんか、お断りって桜井さんに言われたら、ソウくんどうするの?」


「・・・。」


「その時にも私、チャンスない?」


目と目が合う。切なそうに自分を見る唯の表情に胸をつかれる。でも・・・


「そんなんで、唯はいいの?」


「えっ?」


「そんな理由で、僕が君を選ぶことはできない。」


「ソウくん、私・・・。」


「君はそんな、自分を安売りしちゃいけない。」


その俺の言葉に、息を呑むように、唯は黙る。十秒、二十秒・・・やがて


「そっか、そこまでソウくんに嫌われちゃってたか・・・。」


そう言うとポロリとひとつ涙を流した唯。


「唯・・・。」


「二十歳の浅はかだった自分を恨むしかないね。」


「・・・。」


「ひとつだけ、聞いてもいい?」


「何だい?」


「あの時の私が、あんなバカなことを言い出さなかったら・・・ソウくんは今でも、私を好きでいてくれてた?」


今度は俺が息を呑む番だった。
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