Thirty’s
「ごめんね、茉莉。今日はちょっと急ぐから。あと、よろしく。」


定時を過ぎ、何とか目途がつくまで・・・そう思って頑張ってたけど、もう限界。私は隣の茉莉にそう言うと、次の瞬間には席を立っていた。


「えっ?は、はい。お疲れ様でした。」


きょとんとしながら、私を見送る彼女の視線を背に、オフィスを出た私は、エントランスへ急ぐ。


総一郎が帰って来る、唯さんとどんな話をしたんだろう?何を胸に帰って来るのだろう?


もう手遅れ、なのかもしれない。でも今は一刻も早く、彼に会いたかった、彼の声を聞きたかった。そして私の気持ちをぶつけたかった。ただ、それだけ・・・。


役所を飛び出し、駅に急ごうとする私を


「桜井さん。」


と呼び止める声、三嶋さんだ。


「ごめん、今はあなたと無駄なおしゃべりをしてる暇はないんだ。」


「ちょっと無駄って言い方は失礼じゃない?」


色をなす彼女に


「今は総一郎と会うことが大切。それが終わらなきゃ、あなたとも話が出来ないでしょ!」


そう言い返して、行こうとすると


「加奈!」


今度は後ろから呼び止められる。


「山本さん。」


「ちょっと来てくれ。」


「ごめんなさい、今日は・・・。」


「いいから来るんだ!」


大声を出す秘書官に、周りの目が集中する。このままではさすがにまずい・・・。


「わかりました。」


そう答えると、呆気に取られている三嶋さんを残して、私は山本さんの後を追った。
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