Thirty’s
山本さんは、私を助手席に乗せると、走り出す。


「どうしたんですか?急に。」


さすがに堪りかねて尋ねると


「いつまで待たせるんだ?」


苛立ちを隠せない山本さんの声。


「無理強いをするつもりはなかったが、それにしてもそろそろ返事をくれてもいい頃だろう。」


待たされてると言われれば、確かにその通りだけど、でもこの態度の急変はなんなのだろう?例の出馬表明の時期が迫って来てるのだろうか?でも、それならそうと言って来るはずだし・・・。


私は内心、首を捻ったが、でも考えてみれば、総一郎と話をする前に、自分の気持ちを山本さんにはっきりと伝えるということは、必要かもしれない。


(いいタイミング、ということなのかも・・・。)


そう思い至ると、心が徐々に落ち着いて来る。


車はやがて、ライトアップされた国会議事堂が望める車道の脇に停車した。門番の衛視の姿が遠くに見える。


「興奮して済まなかった。」


エンジンを止め、横の私を見た山本さんの声は、落ち着きを取り戻していた。


「ここなら落ち着いて話せるだろう。」


そうかもしれないけど、何もこんな所で・・・というのが正直な思い。すると


「俺はそう遠くない将来、ここの正門をくぐることになる。」


山本さんが話し出す。


「まずは参議院。やがて親父の後を継いで、衆議院議員になって、親父のように厚生族となって大を成す。大臣もやることになるだろうし、そうじゃなくても、厚労省への俺の発言力は、否が応でも強くなっているだろう。」


「・・・。」


「そんな俺の存在は、決して君にとってマイナスにはならない。間違いなくプラスの力になるはずだ。」


(なるほど、このことを改めて私に言いたくて、わざわざこんな所に連れて来たのか・・・。)


私は内心で、フッとため息をついた。
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