Thirty’s
「先輩。」


「うん?」


「今更ですけど私、なんで今の部署に残ったんですかね?」


「本当に今更だな。」


「あの時、先輩は私を呼んで、『君は残ることになる、そう思ってた』とおっしゃった。どうしてですかと私が尋ねたら、『まぁ、そのうちわかるよ』って、言いましたよね?」


「そうだったか?」


「ええ。だから、改めてお聞きしてもいいですか?どうして私が残ったか。」


私の言葉に、山本さんの表情が一瞬固まる。


「深い意味はない、そんな気がするっていう程度の話だよ。」


「誤魔化さないで下さい!」


思わず語気が強くなった。


「秘書官が大臣を通じて、人事に掛け合ったから。違いますか?」


そう言って、彼の顔を見ると


「親父が留任することが確実になって、そうなれば俺も残る。加奈は昔馴染みでもあるし、仕事ぶりにも一目置いていた。やりやすいスタッフを残したっていう動機じゃダメか?」


やや苦笑い気味の微笑を浮かべながら、答える。


「それだけが動機なら、構いません。でも、違いますよね?」


「うん?」


「私を個人的に近くに置いておきたかった、一番の狙いはそれですよね?」


「まぁな。」


「それは、個人的な思惑で人事に介入したってことですよね?」


「そうだ。それの何が悪い?」


少し苛立ったように、山本さんは言う。
< 210 / 238 >

この作品をシェア

pagetop