Thirty’s
秘書官は、少し言葉を探していたようだったが、やがて


「すまん。」


と頭を下げて来た。


「加奈の思いを踏みにじった、いや知ろうともしなかったのは、完全に俺の落ち度だ。」


「・・・。」


「だが、これからは、その辺のコミュニケ-ションはきちんと取るようにする。夫婦になるんだからな、当然のことだ。」


そう言って、私を見た彼は


「そして、俺は国会で力をつける。加奈は霞が関で上へ行く。俺たちがそれぞれの場所で上へ行けば、出来ることはいくらでも増える。前にも言っただろう?俺は本気で、君とならそれが出来ると思ってる。」


その声には迷いがなかった。


(そっか・・・。)


その迷いのない表情を見て、私は改めて思わされた。


(この人は本気なんだ。)


って。ただ、私を利用しようとしているわけでもない。自分の出世の為のアクセサリ-にしたいわけでもない。


この人は本当に、私と一緒にそんな未来を歩みたいと思ってくれているんだって。


そんな彼の情熱、思いは信じるに値するものなんだろう。


でも・・・。


「山本さん。」


「なんだ?」


「ありがとうございました。」


「えっ?」


「私のことを、そこまで評価してくれて。私との将来を、そこまで真剣に考えてくれて。」


「だったら・・・。」


「でも、ごめんなさい。」


山本さんが息を呑むのが、はっきり見えた。だけど、言わなくちゃならない。


「あなたと一緒の未来を歩むことは・・・出来ません。」


私がこの言葉を口にした途端、空気が固まった。
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