Thirty’s
第二十三章 そのままの君が好き
電車の扉が開く。


もう、総一郎は帰っているだろうか?LINEを送ろうか、迷っている内に、駅に着いてしまった。


こうなった以上、一刻も早く家に帰ろう、帰らなきゃ。そう思い定めて、改札口を出ると


「お帰り。」


という声が聞こえる。びっくりして、その方を向くと、間違いなく総一郎が立っている。


「どうしたの?」


思わず、彼に近づき


「迎えに来てくれたの?」


そう尋ねる。


「もちろん・・・って、言いたいところだけど、残念ながらちょっと違う。」


「えっ?」


「でも・・・会えてよかった。」


そう言って、優しい笑顔を浮かべる総一郎。


「お帰り。総一郎。」


その笑顔に引き込まれるように、言うと


「ただいま。心配掛けて、ごめん。」


穏やかな口調で総一郎が答えてくれるから


「ううん、大丈夫。」


思わず、私もそう答えていた。


「話があるんだ、加奈。」


「うん。」


「だから、少し歩かないか?」


「えっ、部屋に戻らないの?」


「うん、部屋じゃない方がいいような気がする。」


「そうなんだ・・・わかった。」


こうして、私たちは並んで歩き出す。


歩きながら、でも言葉はない。手を繋ぐでもなく、でも距離を取るでもなく、ただ黙々と並んで。


家の前を通り過ぎ、更に歩くこと数分。たまに散歩がてらに行く、近くの公園が見えて来る。


「実はちょっと前までここにいたんだ。」


「?」


「君の帰りが遅くなるかもしれない、いやひょっとしたら帰って来ないかも。そんなことを言いに、わざわざやって来た奴とここで少し話をしていたんだ。」


もちろん、それが誰かはすぐにわかった。私たちはそのまま、公園に入って行く。
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