Thirty’s
「成長しない人だね。」


私が呆れた声を出して、彼を見ると


「すみません。」


バツ悪そうに俯く総一郎。


「でもさ、仕方ない。」


「えっ?」


「それが沖田総一郎なんだもんね。」


「加奈・・・。」


「私はそんな総一郎が・・・そのままの君がやっぱり好き。」


私はニコリと微笑んだ。


「ありがとう。僕も・・・だ。」


そう言って、近寄って来ようとする総一郎に


「ただし。」


私は言う。


「三度目はないからね、それだけはハッキリ言っとくよ。」


「かしこまり、です。」


総一郎がペコリと頭を下げ、次の瞬間、顔を見合わせた私たちは、今度こそどちらともなく歩み寄ると、しっかりと抱き合った。


「加奈・・・ありがとう。」


「総一郎。」


「うん?」


「大丈夫だから。」


「何が?」


「山本さんの力を借りなくても、ちゃんと出世して見せるから。だから、あなたはそれを横で見守ってて。」


そう言って、彼を見上げた私に


「わかった。」


と頷いた総一郎が、一段と強く抱きしめてくれる。


「よかった。」


「これで妹と結婚しなくて済みそうだ。」


「なにそれ?」


「三嶋に凄まれてたんだ。もし君の心を取り戻せなかった時は潔く私か唯さんを選べ。誰も選ばないなんて傲慢なことは許さないって。」


「彼女らしいね。」


思わず、笑ってしまったけど、すぐに


「ねぇ、そろそろ帰ろう。私たちの家に。」


柄にもなく、こんな甘えた声を出してしまった。


「そうだな。」


総一郎が笑顔で答えると、私たちはいったん、身体を離して、手をしっかりとつなぐと歩き出す。


そう、あくまで「いったん」。だって、夜は長いんだから・・・。
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