Thirty’s
山本秘書官が正式に次期参院選への出馬を表明し、退任したのは秋の国会が始まる直前の九月半ばであった。


挨拶に訪れた私を


「こうなってしまうと、加奈を強引に大臣官房に残したのも何の意味もなくなってしまったなぁ。」


苦笑い交じりで迎えた山本さんは


「まぁ改めて、婚約おめでとう。」


と言ってくれた。


「ありがとうございます。」


御礼を述べた私に


「実はな。」


先輩は語りだす。


「あの日、加奈を強引に連れ出したのは、唯さんから、沖田くんに振られたことを聞いたからだったんだ。」


「そうだったんですか?」


「完全に計算違いだったからな。唯さんが彼を落とせなかったのも、彼が加奈を諦めなかったのも。」


「・・・。」


「ま、仕方がない。力及ばずということだ。選挙で二の舞を踏まないように注意するよ。」


と言って笑った山本さんだったが、ふと真顔になると


「最後にひとつ聞いてもいいか?」


と言って来るから


「はい。」


と頷くと


「君は、俺が君の為に使おうとした力が、逆に作用する日が来るかもしれないということを考えなかったのか?」


じっと私を見た。


これには、思わず固まってしまったが


「まぁ本当にそんなことが出来るようになるかは、所詮、これからの俺の努力次第っていう話だ。ということで、また会うことになる日まで、まぁお互いに頑張ろう。」


そう言って、笑顔になった。


話が終わり、退出した私は、オフィスに戻りながら、大学以来の彼との交流に、改めて思いを馳せながら


(出来れば、もう関わりたくない。とにかくめんどくさいもの・・・。)


心底、思っていた。
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