Thirty’s
「だからと言って、唯をひとりにするのは、あまりにも可哀そうだ。もちろん、アイツの周りには、優秀なスタッフが何人もいるだろう。ソウも今はそのひとりになってくれてるようだが、唯が今求めているのは、恐らく精神的にアイツをサポ-ト出来る存在だ。それが恋人、パートナ-という存在なら一番いいんだろうが、残念ながら、今のアイツにそんな存在は候補すら見当たらない。」


「・・・。」


「だとしたら、今それが出来るのは、アイツにとってそういう存在になってやれるのは血のつながった兄である俺しかいないんじゃないか、そう思わざるを得ないんだ。」


徹くんの思いが心にしみる。でも、妻として、私はどうしても聞かなきゃいけないことがある。


「でも、それでいいの?」


「悠・・・。」


「あれだけ、お義父さんの会社に入ることを拒んで来たのに、本当にそれでいいの?」


そう言って、夫を見る私を、彼は優しく見返して来る。


「いいか悪いかと聞かれれば、正直良くはない。本当にやりたいかやりたくないかと言われれば、やりたくはない。」


「徹くん・・・。」


「今の仕事は充実している。なんと言っても大好きな高校野球にまた携われてるんだから、誰が好き好んで、こんな状況を手放したいと思う?」


「・・・。」


「それに今更、俺が社長の息子でございと、ノコノコ親父の会社に入って、じゃあ何が出来るんだ?どんな目で見られるんだ?そんな不安も大きい。」


そう言うと、徹くんは少し俯くように、私から視線を逸らした。
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