Thirty’s
「だが、そんな自分の生き方だけを貫いて、唯だけに全てを押し付けるのはやっぱり違う。目を背けようと何度も思ったけど、やっぱり・・・ダメだった。」


そう言って、徹くんは私に視線を向けると


「今ならまだ、親父もバリバリだ。その下でいろいろ学ぶことも出来るだろう。そうやって、唯がサーチから本社に戻って来るのを待つ。そして、アイツを支えてやりたいんだ。いつか、俺のサポ-トなんか必要なくなるまで、アイツが経営者として一本立ちするまで、もしくは・・・俺が邪魔になるような唯を支える誰かが現れるまで、だな。」


ニヤッと笑ってみせる。


「そっか・・・。でもその後、あなたはどうするつもりなの?」


「辞めるさ。お役御免だろ、その時は。」


「でも・・・。」


「そしたら、今度は物書きになる。」


「えっ?」


「野球のこと、一緒に戦った仲間たちのことや甲子園のこと。書きたいことはいろいろある。お陰様で、かつてはひとつ年下のお前に、勉強を教えてもらわなければならなかった俺が、今では人様に読んでもらえるような文章を書けるまでになった。もともとブンヤはいずれ辞めて、そっちの方向に進むつもりだったんだ。」


「・・・。」


「とまぁ、いきなり勝手なことをいろいろ言わせてもらったが、あくまでこれらを実現するには、ひとつの条件がある。」


徹くんは、私を真っすぐに見つめた。
< 224 / 238 >

この作品をシェア

pagetop