Thirty’s
「悠・・・。」


「昔、お義父さんに言われたの。『頭の片隅で構わない。徹は、自分が望まない人生を歩むことになるかもしれない。そして、その時には、君もその道を一緒に歩むことになるかもしれないってことは、覚えておいて欲しい。』って。」


「親父が、そんなことを・・・。」


「まぁ正直、もうないかなって油断してたのも確かだけど、でも今のあなたの話を聞いて、唯ちゃんをひとりにしたくないって気持ち、よくわかった。だから、私も微力ながら、お手伝いします。だから、頑張って。」


そう言い終わった次の瞬間、私は強い力で抱き寄せられた。


「悠、ありがとう。俺、お前にどんなに感謝してもし切れないよ。俺は・・・幸せ者だ。」


感極まってる夫に


「でもどうしてもキャパオーバ-になっちゃったら、SOSは出すよ。それは受け取ってね。」


一応釘を刺すと


「もちろんだ、約束する。」


力強く、夫は頷いてくれる。


「あとひとつ。」


「うん?」


「会社卒業した後のあなたの進路候補に、もうひとつ加えておいて欲しいことがあるんだけど。」


「何だ?」


「明協高校野球部監督。」


「えっ?」


「あなたが母校を率いて、甲子園に行く姿。絶対に見たいんだけど。」


夫を見上げて、こんなことを言うと


「わかった。じゃ、ちゃんと身体も鍛えておかないとな。」


嬉しそうな夫に


「うん。」


私は頷いていた。

◇◇

後にこの話を聞いた俺たちは


「凄いな、悠さんって。」


「とても敵わない、あの子には・・・。」


そんな会話を交わしてしまった・・・。
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