Thirty’s
「私、日本から消えることになりました。」
「えっ、どういうこと?」
「社命でシンガポ-ルの営業所に赴任することになって。まぁ五年は帰って来られないでしょうね。」
「そうなんだ・・・大変だね。」
「そうでもないです。もう日本に未練なかったんで、むしろちょうどよかったです。」
そう言って笑う三嶋さんに、胸をつかれる。
「会社辞めるつもりだったんですよ、本当は。」
「えっ?」
「総一郎・・・沖田さんと出会ったのが、今の会社だし、それに、元婚約者とも顔を合わせることがあって、結構気まずい思いもしてるんで、まぁいろんなものをリセットした方がいいなって。」
「三嶋さん・・・。」
「それで上司・・・私、こう見えても常務秘書なんて、おしとやかそうな仕事してるんで、常務に辞表を出したんですけど、強烈に引き止められて。結局、外国語が堪能なのと、前に海外営業部にいた実績もあったんで、シンガポ-ルに飛ばしてもらいました。ということで、もう未練がましく、あなたたちの周りをうろちょろすることもありません。お騒がせ、しました。」
彼女はそう言って、頭を下げて来る。
「とうとう勝てなかった。」
「えっ?」
「あの日、沖田さんが出張から帰って来た日。私、彼に会って、あなたが山本さんと一緒にどこかに行ったことを教えたんです。からかい気味にもうあなたが帰ってこないかもって言ったら、あの人はこう答えたんです。『俺は加奈を信じてる』って。」
「三嶋さん・・・。」
「あなたと同じ、『信じてる』って。あの彼の言葉を聞いて、私の出る幕はやっぱりないんだな、そう覚悟を決めるしかありませんでした。」
そう言って、自嘲気味の笑顔を浮かべた三嶋さんに、私は声を失う。
「えっ、どういうこと?」
「社命でシンガポ-ルの営業所に赴任することになって。まぁ五年は帰って来られないでしょうね。」
「そうなんだ・・・大変だね。」
「そうでもないです。もう日本に未練なかったんで、むしろちょうどよかったです。」
そう言って笑う三嶋さんに、胸をつかれる。
「会社辞めるつもりだったんですよ、本当は。」
「えっ?」
「総一郎・・・沖田さんと出会ったのが、今の会社だし、それに、元婚約者とも顔を合わせることがあって、結構気まずい思いもしてるんで、まぁいろんなものをリセットした方がいいなって。」
「三嶋さん・・・。」
「それで上司・・・私、こう見えても常務秘書なんて、おしとやかそうな仕事してるんで、常務に辞表を出したんですけど、強烈に引き止められて。結局、外国語が堪能なのと、前に海外営業部にいた実績もあったんで、シンガポ-ルに飛ばしてもらいました。ということで、もう未練がましく、あなたたちの周りをうろちょろすることもありません。お騒がせ、しました。」
彼女はそう言って、頭を下げて来る。
「とうとう勝てなかった。」
「えっ?」
「あの日、沖田さんが出張から帰って来た日。私、彼に会って、あなたが山本さんと一緒にどこかに行ったことを教えたんです。からかい気味にもうあなたが帰ってこないかもって言ったら、あの人はこう答えたんです。『俺は加奈を信じてる』って。」
「三嶋さん・・・。」
「あなたと同じ、『信じてる』って。あの彼の言葉を聞いて、私の出る幕はやっぱりないんだな、そう覚悟を決めるしかありませんでした。」
そう言って、自嘲気味の笑顔を浮かべた三嶋さんに、私は声を失う。