No Title




「でっかく未定って書いてやればいいんだよ、あんなの」

「蒼伊は大学行くの?」

「まあ一応。売れなかったときのため」

「なに系の大学に行くとか決めてる?」

「決めてない。そん時の学力と相談」

「……そっか、まだ決めなくてもいいか」

「こんな大学あるんだなーくらいで見とけばいんじゃね?」

「たしかに」

「ぼけーっとみてたら行きたいとこ見つかるかもしんねーじゃん。やりたいことなくても、この大学のキャンパス綺麗そうとか、そんなんでいいだろ」

「そんなんでいいの?」

「就職活動なんてどの学科で手もそんなに差ないだろ」

「そうなの?」

「知らんけど」

「知らんのかい」



蒼伊には5つ離れたお兄ちゃんがいるらしい。
大学4年生の兄貴はぬるっと就職先も決めてた、やりたいこととか特に決めてなかった、らしいので、必ず全員にやりたいことがあるとは限らないのかもしれない。


考えすぎたら変な顔になるぞ、
またさっきの顔をしておちょくられて、笑い飛ばされてしまった。




「お前さ、俺らのバンドの名前、知ってる?」

「ん-と、ノール、って呼ばれてるのは」


それを知っている理由はもちろん剛くん。彼が自分のバンドのことをよくそう言っている。

どういう意味なのかは聞いたことがなかった。
可愛い名前なのかなとか、勝手に想像してた。



「‘No Title’の略。で、ノール」

「ノータイトル、」

「『なににも染まらない、なににも定義づけられない、俺らの音楽にも、関係にも、はっきりとした名前はいらない』」

「――――、」

「まだ白紙でいいだろ、若いから。いつか今やってることとかが意味のあるものになればいい。っていう、くそかっこつけた意味がある」

「……すごい、」

「いや、ダセーだろ。クソガキ感満載で」


< 24 / 51 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop