No Title
ただのクラスメイトだったのに。
話したことだって、つい最近までなかったのに。
今は、違う。
友達。でもこのまま一緒にいてしまったら。
なんか、そういう気持ちじゃなくなりそうで。
でも、きっと。
恋愛感情を持ってしまったら、この時間が続かなくなってしまうだろう。
蒼伊のこと、もっと知りたい。
知らなかった一部を知ってしまうたび、わたしに見せてくれる歌う姿が、自分だけなんじゃないかと自惚れそうになってしまう。
これ以上近づいてしまったら、もっともっと、わたしはそう思ってしまうだろう。
そんなわけないのに。
彼の夢の途中に好きとか恋愛とか、ないんだろうな。わかってるから。
「ねえ、夏休みもここにくるなら、呼んで」
「サボりにくんの?」
「違う、息抜きにくる」
「ふは、サボりじゃん」
「蒼伊がいなくたって、ここに私は来るんですけどね?」
「じゃあ、お前も呼べよ」
「えー、サボりにくんの?」
「息抜きにくる」
「あ、真似された」
傷つくのは、怖い。
逃げてしまうのは、わたしのわるいくせ。
わたしは、蒼伊のことを好きにならない。