No Title



夏休みなのに校内は文化祭準備で賑わっていた。
どの部活も夏の大会シーズンなので、来れない人もいるけれど、教室にはそれなりに人が集まっていた。



「お、涼子とミサキちゃん」

「おはよう」

「ミサキちゃん部活ねーんだ」

「マネージャーだし、行って来ていいよって。メンバーは練習してるから、その分も働いて来いって言われた」

「めっちゃマネージャーじゃん」

「そうなの」


教室に入れば、こちらに気づいた剛くんが話しかけてくる。
涼子と仲のいい剛くんは、涼子とちょろっと話して、わたしにもしっかり話しかけてくれて元いた輪に戻っていく。



「会うんだね、学校なくても剛くんに」

「アイツうるさいの、暇だ暇だって」

「仲良しじゃん」

「なに?冷やかされても効かないわよ」

「涼子茶化すのツマンナイ」

「残念」



涼子と剛くんの仲の良さはレベルが違う。
二人にしかない空気感という感じがして、どれだけ茶化そうとしても涼子は全く動じないし、そういうんじゃないからって一蹴されるから何も言えない。

剛くんは世話焼きだから、涼子の家庭のことをわかって心配してくれてることも何となく察している。
夜に剛くんに会ったりすることで、涼子は家にいなくて済むから。

剛くんの存在は、涼子にとってすごく大きいだろう。




剛くんが戻っていった輪に視線を移せば、アオイの姿を見つけた。

視線がばっちり絡んで、無視するなよと念を送ればべ、ってあかんべされた。
手を振ったりお辞儀をしたりするつもりは一切ないらしい。



「菊池蒼伊が成長してるじゃない」

「え、どこが?」

「深咲をみてリアクションした」

「あれは威嚇だよほぼ」

「女の子と関わるの慣れてなさそうでかわいいじゃん」

「かわいくないでしょどうみても」

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