No Title
校舎を出た後も涼子は文句を剛くんにちらしながら先を歩いていて、自然と蒼伊の隣に並ぶことになる。
夏休み中の部活はあまり時間が合わなくて結局会わないままだった。2週間ぶりに彼を見たけれど、相変わらず夏の暑さに文句がありそうな顔をしている。
「今日部活あるの?」
「ん。自由参加だけど」
蒼伊の机にはギターケースが乗っていた。
あれを持たずに学校にきている姿はほぼ見たことないけれど。
「終わるかな、一日やりそう」
「部活もどんなくていーの」
「うん、むしろお前しか行けないから行って来いって感じ」
「あー、居なかったなバスケ部」
「大会前だから」
「何時まで?」
「部活?今日は3時かな」
「へえ」
「軽音は?」
「最初に行ったやつが開けて最後のやつが閉めるから時間決まってねえ」
「へえ、自由だ」
「だから別に行かなくてもいい」
「でも剛くんに連れてかれるでしょ?」
「アイツもサボるときはサボるよ」
「え、そうなんだ」
「あいつの最優先は工藤だし」
「え、」
蒼伊の視線の先には、涼子と剛くんの姿。
相変わらず二人は仲がいい。剛くんは涼子に対してどんな感情なのか、わたしははっきり知らない。
「え、ってなんも知らねえの」
「知ってる、けど。よくわからない」
「は?」
「涼子って難しいの」
「………」
「だから、黙って見守ってる」