No Title
「ミサキちゃんと涼子は夏祭り今年も行くの?」
「行く!夏祭りがあるから部活頑張るかあってなってる」
「めっちゃ楽しみじゃんそれ」
「涼子とも全然遊べてないんだけど、夏祭りだけは部活オフなの」
「みんな行きてえもんな」
「剛くんは?行くの?」
「行く行く。蒼伊とバンドのやつらと」
「そっか。剛くんが一番お祭り好きそうだね」
「俺がいつも引っ張り出してる」
「どこ行くにもそうなんだ」
4人で別れて買い出しをして、待ち合わせ場所に着けば剛くんが一番乗りで済ましていたらしい。
俺ってせっかちだからすぐ買い物終わるんだよ、と笑っていた。
「涼子と浴衣着てくよ」
「ナンパされないようにな、浴衣着てるってだけで寄ってきそうじゃん」
「ナンパされたら剛くんに助けてもらうね」
「すぐ電話して、ぶっ飛んでってぶっ飛ばすから」
「涼子大人っぽいからすぐ大学生に声かけられるんだよね」
「しかもホイホイついてっちゃいそうだしな」
「剛くんが止めてよね」
「いや、まずはミサキちゃんが止めろよ?」
「そうだった」
大きな神社だから、地域の人だけでなくいろんな人が来るお祭りだ。
ああいうお祭りになるとなんでナンパみたいな人たちが出てくるのかはわからないけれど、去年は部活で私が遅れてしまっている間にしっかり涼子が話しかけられていて「彼氏いるんで」と大きな嘘をついてかわしていたことを思い出した。
「文化祭実行委員もやってバンドのライブもあって、大変だよね」
「俺って大変な方が楽しいんだよね」
「変だね」
「蒼伊のほうが変だろ?何考えてるかわかんない」
「剛くんにもわかんないんじゃ誰もわかんないじゃん」
「一個だけわかるよ」
「なに?」
「ミサキちゃんのことは結構気に入ってる」