獅子の皮を被った子猫の逃走劇
 「はぁっ、はぁ、」


 折田先輩の声を皮切りに、私は後ろの方に走った。

 どのくらい走ったのかも分からない。


 「折田先輩……」


 止まって振り返ってみても、当然折田先輩の姿は見えなくて。

 大丈夫かな、ちゃんと生きてるかな。

 静かな道のど真ん中でポツンと佇む。

 頭の中で二人の自分が言い争っていた。

 "仮にも総長なんだから逃げちゃいなよ"
 "今行ったって、邪魔になるよ"

 と言う私と、

 "折田先輩を置いていっていいの?"
 "何か出来ることあるかもしれない"

 と言う私。

 どうすればいいのか分からない中で、頭に残っているのは、ただ折田先輩の後ろ姿だけ。

 涙が込み上げてきて、鼻をツーンと刺激した。


 ……戻ろう。

 このままじゃダメだ絶対。

 念のため、幹部の人に連絡を入れてから、また走り出した。

 さっきとは逆の方向へと。
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