獅子の皮を被った子猫の逃走劇
 あの日から今日で約一ヶ月。

 相変わらず獅音は俺の予想外のことばかりしていた。

 えっぐいスピードで飛んでくる色んな物を平気で避けるわ、何もないところでずっこけるわ。

 普段荒れてばっかで、幹部でも手を焼いている奴を、いつの間にか手懐けてもいた。

 こればっかりは、あの朔でも驚き顔だった。

 まじで何をすればそうなんの?って思うことばっか。

 しかも、本人は無意識で気づいていないってのがまた面白い。


 昨日の会議で。

 俺と獅音の二人での視察を言われた時、すぐに獅音を危険な目に合わせられないと、俺は反対した。

 けど、俺が守れば良いだけだと言われて、確かにと納得した。


 そこでふと思った。

 俺はどうして獅音をそこまで気にかけるのかと。

 総長だからか、?

 いや、前の総長には敵対心しかなかった。

 その時はよく分からなくて、考えるのもめんどくせえし思考を放棄した。


 ――でも。

 今ならなんとなく分かる気がした。


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