獅子の皮を被った子猫の逃走劇


 「――よし、これで終わりです!」
 「あぁ、助かった」
 「いえいえ、あくまで応急処置なので」


 俺がさっきのことを思い出している内に、処置は終わったようだった。

 改めて、獅音の顔をじっくりと見る。

 男にしては、小柄で目も大きい。

 たい焼きを食べている時も思ったが、どことなく漂う小動物感がある。

 とは言え、こいつは男だ。


 「え、じっと見てきて何ですか」
 「いや、うわ……、まじか」
 「ええ?」


 訝しげに俺を見る獅音をそのままに項垂れる。


 ――俺が獅音を……男を好きになるなんて。

 そう自覚した瞬間に、眼の前のこいつが無性に可愛くて仕方なく思えるもんだから、恋の力ってすごい。

 今の俺は、成り行きでこいつの部屋にいる上に、二人っきり。

 獅音の香りでいっぱのこの空間は、今の俺には毒だった。


 ……俺が好きだって言ったら、こいつどんな反応するんだろ。




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