獅子の皮を被った子猫の逃走劇

これがギャップってやつ?



 「ははっ、そんな必死にしがみつかなくても、ここにいるっつーの」


 ひぇ……。

 あれは本当に私の知る折田先輩?

 優しい瞳で見つめられながら、顎下をくすぐられる猫ちゃんに、少し羨ましいなーなんて。

 いやいや何考えてんだろ私!


 目の前で展開されてる幸せワールドに、踏み出すことの出来なかった私はひたすら角から覗き込む体制で。

 その時。

 視線に気づいたのだろう折田先輩が、バッとこちらを見た。

 あ、目が合った。


 「お、おおお前!なにしてんだそこで!!」
 「あは、バレちゃった……」


 分かりやすく気が動転している先輩が面白くて笑ってしまう。

 すると先輩は、何を勘違いしたのか顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。

 猫ちゃんを可愛がる先輩を馬鹿にしてると思ったのかな、?

 そんなことないよ、と説明しようと口を開ける前に折田先輩が口を開いた。


 「別にっ、俺が好きでこいつらといるんじゃない。餓死しそうだったから餌あげたら仲間呼んできただけだ」
 「なるほどです」


 先輩、明らかに可愛がってましたよね?

 という言葉は飲み込んで。

 素直じゃない折田先輩に余計頬が緩んでしまう。

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