獅子の皮を被った子猫の逃走劇


 私の視界の先には、肩を寄せあって相合傘をしながら歩く男女。

 しかも見知った顔。

 しかもしかも、一組じゃない二組だ。

 その両方が私の方に歩いてきている状況。

 分かりやすく言うなら、ひらがなの"く"のように、それぞれから向かってきている。


 ーーえ、やばくない!?

 万が一、私だと気づかれて男装がバレたら終わり。

 そうじゃなくても、二組がエンカウントしてしまったらとてもとても気まずい。

 正確には、その場面を目撃する私が勝手に気まずくなる。

 どうするのが最適解?

 私はめずらしく頭をフル回転させた。


 選択肢は三つ。

 一つ目、その場で下を向くなりなんなりして、顔を隠して通り過ぎるのを待つ。

 二つ目、希良ちゃんと一ノ瀬先輩の方に歩く。

 三つ目、折田先輩と謎の美女の方に歩く。


 一番安全なのは、三つ目の選択肢だと思うけど、なんとなく、それを選ぶのは嫌だった。

 何でか分からないけど、折田先輩とその美女が仲睦まじく歩く姿を見たくない。

 そして、私がとった行動は、
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