獅子の皮を被った子猫の逃走劇
そっぽ向きながら、折田先輩と美女の方に歩く!
これが、1番男装バレの危険少ない且つ、気まずくならない方法だと思う。
そう決めて方向転換するも、顔を合わせて話す二人の姿に、胸が締め付けられる感覚がした。
何でこんなに胸が痛いんだろ……。
初めての感覚に、戸惑いながらも歩いた。
すれ違いざまに、折田先輩の声で"かおり"と聞こえた。
あの美女の名前はかおりさんかー。
名前まで可愛いって何事だっ!と内心でツッコんだ。
……折田先輩、彼女さんいたんだ。
その事実が、私の中で木霊した。
別にだからなんだって話だけど。
ふーん……、そっか。
ただでさえこの天気で憂鬱だったっていうのに、余計に雨が鬱陶しく感じ始めたから不思議だ。
強くなった雨脚に、身を縮こまらせながら、叔母の待つ病院へと急いだ。