獅子の皮を被った子猫の逃走劇


 そっぽ向きながら、折田先輩と美女の方に歩く!

 これが、1番男装バレの危険少ない且つ、気まずくならない方法だと思う。

 そう決めて方向転換するも、顔を合わせて話す二人の姿に、胸が締め付けられる感覚がした。

 何でこんなに胸が痛いんだろ……。

 初めての感覚に、戸惑いながらも歩いた。


 すれ違いざまに、折田先輩の声で"かおり"と聞こえた。

 あの美女の名前はかおりさんかー。

 名前まで可愛いって何事だっ!と内心でツッコんだ。


 ……折田先輩、彼女さんいたんだ。

 その事実が、私の中で木霊した。

 別にだからなんだって話だけど。

 ふーん……、そっか。

 ただでさえこの天気で憂鬱だったっていうのに、余計に雨が鬱陶しく感じ始めたから不思議だ。


 強くなった雨脚に、身を縮こまらせながら、叔母の待つ病院へと急いだ。

< 42 / 73 >

この作品をシェア

pagetop